2017年4月より長年の懸案であった婦人科領域において常勤体制に入ることができ、現在は周囲の医療機関との連携協力により順調に紹介患者を増やしております。2019年4月より長野医師を加えて、椙田医長・村瀬医師・長野医師の常勤医師3名と、 火曜日と金曜日の日本大学産婦人科教室から派遣される非常勤医師2名の新体制となりました。 日本大学産婦人科学教室との強い連携を持ちながら様々な婦人科疾患に対応致しております。
北多摩地区の中核病院として婦人科一般を取り扱い、婦人科腫瘍(子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌など)に積極的に対応しております。
悪性婦人科腫瘍に対しては、IC(インフォームドコンセント)を必ず行った後で方針を決定し、QOLの維持にも配慮して手術、放射線、薬物治療を適切に組み合わせた診療をおこなっています。
良性疾患の手術に対して、基本的には腹腔鏡手術・子宮鏡手術で対応しております。
また骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、尿失禁の患者様)に対して専門外来を設けて、積極的に手術を行っております。特に腹腔鏡下仙骨腟固定術(IRCAD式)を導入し、再発率の低下を目指した治療を行っております。また腹腔鏡下Shull法も積極的に施行しております。手術成績については下記の表をご覧ください。
当院は立川市の子宮頸癌検診指定医療機関であり、子宮頸がん細胞診、コルポスコピー下組織診、ホルミウムYAGレーザーを用いた子宮腟部円錐切除などの様々な方法を用いて子宮頸がんの早期発見、早期治療に努めています。
また専門外来としてコルポス外来を水曜日と木曜日の午後に設けております。
大変申し訳ございませんが、現在の時点ではマンパワーの関係と医師の専門性などにより周産期領域、不妊・内分泌領域の専門的な診療は控えさせていただいております。
*専門外来を開設しております。
基本的に予約制を導入しております。当院医療連携室へご連絡をお願い致します。
婦人科で扱う主な臓器は子宮と卵巣です。子宮にできるがんは、頸部に発生する子宮頸がんと体部に発生する子宮体がん(内膜がんとも言います)に分類されます。これら2種類のがんは全く異なった性格を持っています。
子宮頸がんの発生には、性行為によって感染するヒトパピローマウイルスが関与していることが明らかとなっています。そのため若年者にも多くみられます。子宮頸がんの診断においては、がん検診(細胞診)が有効で、細胞診で異常がでた場合、細胞診の再検査と同時に子宮頸部を拡大鏡で観察する「コルポスコピー」と呼ばれる検査を行います。併せて病気の度合いが最も強そうな場所を見極め、その場所を狙って組織を少し削り取ってくる、「ねらい組織診」を行います。このようにして、しばしば無症状な前がん病変の異形成や上皮内がんの段階で発見することにより、子宮の温存も可能になりました。
女性ホルモンの一つであるエストロゲンは子宮内膜を増殖させ、前がん病変である子宮内膜増殖症や子宮体がんの発生に関与します。肥満、糖尿病、高血圧症や不妊症の女性に多いことが知られています。子宮体がんの発生は10年の間に2倍以上となっています。好発年令は、子宮頸癌に比べてやや高齢で、50~60歳代とされています。患者の90%に不正性器出血がみられ、出血は褐色の帯下(おりもの)だけの場合もあるので注意が必要です。
腹腔内に存在し左右に1個ずつある卵巣にできるがんは、欧米に多い病気でしたが、最近は日本でも増加していて、卵巣腫瘍の約10%が悪性とされています。一般に腫瘍が小さい場合は無症状のことが多く、日常生活に支障はありません。しかし時に直径20cm以上と巨大になることもあり、腫瘍が大きくなると、膀胱や直腸の圧迫による頻尿や便秘、リンパ管の圧迫による下肢の浮腫などがおこることがあります。腹水が貯留するとさらに腹囲が増大し、おなかが妊婦さんのように前に突き出してくることがあります。内科などを受診した際に、偶然、卵巣腫瘍が発見されることも少なくありません。スカートやパンツのウエストがきつくなったことに気付いて受診し、診断される場合もありますが、太ったためだと思い込み、そのままにしてしまう人も多いようです。また、子宮がん検診の際に発見されることもあります。
卵巣に発生する悪性腫瘍は、境界型悪性腫瘍と卵巣がんがあり、手術で摘出した腫瘍の病理組織診断で確定します。境界悪性腫瘍とは良性と悪性の中間的な性格を示すもので、予後は悪性腫瘍に比べて良好で、多くの場合、手術のみで完治が可能です。
がんに対する治療は手術、化学療法(抗がん剤投与)、放射線療法を組み合わせて行います。治療の前に、がんの進行(体の中での広がり)の程度をできる限り調べて把握することが、治療方針を決める上で大変重要です。
当科では、約1週間の全身精査の入院を行います(胃カメラ、大腸カメラ、膀胱鏡、MRI、CTなど)。また外来で必要に応じてPET-CT検査も施行します。
腫瘍が存在することにより血中に増加する物質を腫瘍マーカーといい、測定して診断の補助に用います。現在のところ、悪性腫瘍にだけ特異的に増加するマーカーはなく、各々の腫瘍マーカーの特徴を知った上でいくつかを組み合わせて診断に用います
前がん状態や0期の上皮内がんの診断がついた場合には、(妊娠の可能性を残すための)円錐切除術や単純子宮全摘術などの手術を行います。
Ib期以上の患者さんに対してはリンパ節郭清を含む広汎な子宮全摘術と放射線療法や化学療法が行われます。さらにがんが進行した(Ⅲ期以上の)患者さんには、放射線治療または放射線と抗がん剤治療を同時に行う放射線・抗がん剤同時併用療法が行われています。
子宮体がんの治療は手術が主体です。進行症例には、化学療法や放射線療法などいくつかの治療法をあわせて行う集学的治療が行われます。
基本的には手術で子宮と卵巣を摘出します。がんが転移していく先であるリンパ節も摘出する場合が多いのですが、がんのタイプや広がりによって手術方法は変わります。
前がん病変とされる子宮内膜異型増殖症や初期の子宮体がんの一部に対しては、子宮を温存するホルモン療法の選択枝もあります。ただし、適応や副作用の問題があるので、相談することが必要です。
卵巣悪性腫瘍の治療の基本は、手術で腫瘍を可能な限り摘出することです。初回手術では、その所見から、進行期を確実にする必要があります。術式は子宮摘出術、両側付属器摘出術、大網切除術、後腹膜リンパ節郭清術を基本とします。しかし早期の腫瘍で、若年者や挙児希望のある症例には患側の付属器摘出術にとどめる場合もあります。
腫瘍がすでに進行しており、癒着などがひどくて摘出が困難な場合は、腫瘍の一部だけを摘出し、手術後の化学療法の効果を期待する方法もあります。化学療法を何回か施行した後に、二次的腫瘍摘出術を施行します。手術後は抗がん剤を用いた化学療法を施行し、残存腫瘍や腫瘍細胞の完全消滅をはかります。術後の化学療法は、残存腫瘍径が小さい程効果があるとされています。
気になることがある場合は、専門医の外来を受診されることをお勧めいたします。
引用:https://jsgo.or.jp/public/introduction.html