放射線科は単純X線写真からCT、MRIなど最先端画像までの画像診断と画像誘導下で行う局所治療(インターベンショナルラジオロジー:IVR)、および放射線を使った侵襲性の少ないがん治療を行う診療科です。画像診断、IVRを扱う診断部門と、がんに対する放射線治療を扱う治療部門から構成されます。
診断部門は常勤医5名(内、放射線科診断専門医3名、日本IVR学会専門医3名、治療部門は医師4名(共に放射線治療専門医)がそれぞれ在籍しており、放射線科専門総合医修練機関、日本IVR学会専門医修練施設、日本放射線腫瘍学会認定施設にも認定されています。
当院の放射線診断科の特長として、読影業務(CT、MRI、核医学検査などの読影レポートの作成)に加え、IVR(Interventional Radiology)と呼ばれる画像下治療に力を入れています。IVRとはX線透視、CT、エコーなどの画像ガイド下にカテーテルや穿刺手技を行う治療法で、患者さんに負担の少ない低侵襲である特長があります。
当科では血管系IVR(TACE、塞栓術、BRTO、PTOなど)、非血管系IVR(PTCD、胆管ステント、エコー・CTガイド下生検など)に加え、心臓血管外科と合同で大動脈ステントグラフトを施行しています(指導医・実施医在籍しており緊急でも対応可能)。
当院は三次救急医療機関であり、外傷を含む重症の救急患者を広く受け入れています。
当科では緊急IVRを要する患者(大量出血に対する動脈塞栓術など)に即時対応するため、24時間365日オンコール体制を敷いています。
当科の特色として患者さんの負担が少なく、安全な手技の遂行を目指して、術前に画像再構成による多角的な解析を行っています。
読影・IVR以外の業務として以下のことも行っています。
・救急科と合同で重症外傷診療の多職種連携シミュレーション(Trauma Workflow Improvement Simulation Training 通称TWIST)
・造影剤使用時の急変対応の講習(Simulation Training of Anaphylaxy for Radiology Team 通称START)
・新しいカルテシステムの構築や新規IVRデバイス(マイクロカテーテルなど)作成など関連業者への技術協力
当科では、当院放射線治療科、核医学を扱う他病院と連携した放射線科専門医プログラムがあり、1~3年間の研修で放射線科専門医の取得が可能です。研修期間によっては放射線科診断専門医資格も取得可能です。当科専門医指導の元、放射線科専門医、放射線科診断専門医資格、IVR専門医資格まで取得をサポートします。
また、2021年から2022年にかけて、新しいCT装置320列の導入、血管造影室を新たに更新したため、最新機器のもとで研修を行うことができます。
これまでの当科での研修修了者は、救急IVRを学びたいという放射線科医師、サブスペシャリティの取得を目的とした救急科医師などが、3年程度の期間を持って研修してきました。これまでに20人以上が当科で研修を行ってきました。
興味のある方、見学したいという方は、お気軽にご連絡ください。
メールアドレス:saigai.radiology@gmail.com
院内各診療科からの依頼のほか、近隣の他病院、他施設からIVR治療を目的としたご紹介にも対応しています。
外傷性出血に対する止血術・・・交通事故などによる出血をカテーテルで止める治療
消化管動脈性出血に対する経皮的止血術・・・潰瘍、憩室出血などによる出血を止める治療
術後出血に対する止血術・・・手術によって生じた仮性動脈瘤や出血を止める治療
内臓動脈瘤塞栓術・・・破裂の危険性がある動脈瘤を詰める治療
肺動静脈瘻(奇形)塞栓術・・・脳梗塞などの危険性がある肺の異常血管を詰める治療
気管支動脈塞栓術・・・喀血の症状に対して気管支動脈を詰める治療
腎機能廃絶術・・・透析腎の血管を詰めて腎臓の出血を止める治療
腎血管筋脂肪腫に対する塞栓術・・・破裂の危険性がある腫瘍の出血を防ぐ治療
仮性動脈瘤穿刺塞栓術・・・手術や処置後にできた動脈の破綻部の出血を針で刺して詰める治療
肝細胞癌(HCC)に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)・・・肝細胞癌に対してカテーテルで抗がん剤を流したり血管を詰めたりする治療
ラジオ波凝固療法(RFA)・・・肝腫瘍を針で刺して焼いて壊死させる治療
中心静脈ポート留置術・・・抗がん剤治療などのためにポートと呼ばれる注射用のルートを胸などに埋め込む手術
大動脈ステントグラフト留置術(胸部・腹部)・・・ステントグラフトという特殊な人工血管を留置して、胸部・腹部大動脈瘤の破裂を防いだり、大動脈解離の裂け目を塞いだりする治療
バイアバーン使用した動脈ステントグラフト留置術・・・細径のステントグラフトを留置して止血をする治療
経皮的門脈ステント留置術・・・腫瘍により狭くなった門脈を広げる治療
大静脈症候群に対するステント留置術・・・腫瘍で狭窄した大静脈を広げる治療
急性腸管虚血に対する血栓溶解療法、血栓吸引療法・・・動脈に詰まった血栓を溶かしたり吸引したりして再開通させる治療
バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)・・・破裂の危険性のある胃にできた静脈瘤や異常な血管を詰める治療
経皮経肝的静脈瘤塞栓術(PTO)・・・肝臓に針を刺して門脈を経由して静脈瘤や異常な血管を詰める治療
経皮的門脈塞栓術・・・肝切除術前の肝容積増大を目的として門脈を詰める治療
部分的脾動脈塞栓術(PSE)・・・大きく腫れた脾臓を小さくすることで血中の血小板数を増加させる治療
血管内異物除去・・・断裂したカテーテルなど血管内の異物を取り除く治療
経皮経肝的胆道ドレナージ術(PTCD)・・・流れの悪くなった胆管にチューブを入れて流れを改善する治療
経皮経肝的胆管ステント留置術・・・閉塞した胆管をステントという金属の筒で拡張させる治療
経皮経肝的胆嚢ドレナージ術(PTGBD)・・・胆嚢にチューブを入れて胆嚢炎を改善する治療
経皮的胆管結石除去術・・・胆管の中にできた石を胆管外に押し出す治療
経皮的生検術(エコー・CTガイド下)・・・腫瘍の診断や治療方針をつけるために、エコーやCTを利用して針を刺して検体を採取する手技
膿瘍ドレナージ・・・体に溜まった膿をチューブで体外に排出する治療
経皮経胃的膵仮性嚢胞ドレナージ術・・・膵炎後など膵液による嚢胞にチューブを入れて小さくする治療
嚢胞硬化療法・・・体内にできた巨大な嚢胞に針を刺して小さくする治療
放射線治療は手術や薬物療法と並び、がん治療の三本柱の一つとなっています。臓器の形態や機能を温存し、がんを根治できることが大きな特徴の1つです。放射線治療部門では、放射線治療医、治療専門医学物理士、診療放射線技師、看護師が一丸となり、患者さんへの最適な治療が行えるよう日々努めています。また、各科との連携を密にして、速やかに放射線治療が提供できるよう努めています。
画像誘導放射線治療(IGRT)によって、病変により正確に放射線を照射することが可能になりました。当院では基本的に、照射前にX線の撮影を行い、正確な位置合わせを行っています。また、定位放射線治療(SRT)によりピンポイントで大線量を病変に照射することが可能になりました。適応疾患にもよりますが、短期間での治療が可能です。また、品質管理も定期的に行っており、放射線治療の質を担保しています。
当院では、4名の放射線治療医が診療にあたっています。また、がん診療連携拠点病院の指定を受け、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の施設認定も取得しており、年間約250名から300名程度の患者さんの治療を行っています。
中枢神経腫瘍・頭頸部癌・肺癌・乳癌・食道癌・直腸癌・膵臓癌・胆道癌・前立腺癌・骨軟部腫瘍・皮膚腫瘍・転移性骨腫瘍・転移性脳腫瘍・その他の転移性腫瘍・良性疾患(ケロイド、バセドウ病)などが放射線治療の対象となります。
放射線治療 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
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外部照射 | ||||
全患者数 | 257 | 322 | 292 | 247 |
新規患者数 | 235 | 288 | 256 | 215 |
肺がん | 90 | 97 | 73 | 70 |
乳がん | 28 | 35 | 53 | 33 |
前立腺がん | 33 | 46 | 52 | 33 |
悪性リンパ腫 | 21 | 22 | 9 | 10 |
食道がん | 17 | 18 | 15 | 12 |
肝胆膵 | 9 | 9 | 10 | 9 |
直腸・大腸癌 | 16 | 22 | 14 | 10 |
原発性脳腫瘍 | 2 | 8 | 5 | 6 |