21世紀は心の世紀とも呼ばれています。2011年、厚生労働省は、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に精神疾患を加えて「5大疾病」と定義し、これまで以上に重点的に対策を進めていく方針を明確にしました。
しかしながら、このような体の不調と心の不調は本来切って分けることができません。例えば心理的ストレスで胃潰瘍などの体の症状が出ることもありますし、逆に重たい病気にかかってしまった苦悩で精神的な調子を崩してしまうこともあります。総合病院精神科は、現代において分離されがちな体と心の橋渡しをする役割を担っています。
当院精神科は高度医療を心身両面からサポートするために、精神科リエゾンチーム、認知症ケアチーム、緩和ケアチームの一員として、活動しています。認知症の進行予防、せん妄の改善、リハビリテーションの強化に努めています。
当院には精神科病床が存在しないため、精神科のみの入院診療は行っておりません。これに伴い、夜間・休日の診療や処方、電話対応も行うことができません。精神科入院加療が必要な方については、他院への紹介または精神科救急システムへのご相談をお願いすることとなりますので、ご理解頂きますようお願い申し上げます。
現在精神科では、初めて外来受診される方の診察を行っておりません。
身体科入院患者のコンサルテーション・リエゾン活動に専念するため、現在外来通院中の患者様については、他院への紹介・転医をお願いしています。ご協力のほど、お願い申し上げます。
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私たちは、精神疾患発症を予防するための臨床研究にも力を注いでいます。国立がん研究センターの松岡豊医師(社会と健康研究センター健康支援研究部長)と、東京大学の西大輔医師(大学院医学系研究科精神保健学分野准教授)を中心とした研究チームにより、2016年度は英文原著論文6本、2017年度は英文原著論文4本が雑誌掲載されました。
また、災害医療拠点である当院の特色を生かし、東日本大震災の救援者におけるPTSD研究などでも成果をあげています。2014年から2017年に行われた循環器内科・精神科による共同研究では、急性冠症候群に続発する精神疾患のリスク因子を前向きコホートにより検討しました。その成果は英文雑誌に掲載され*、2017年6月の第113回日本精神神経学会で優秀発表賞を受賞しました。今後も、新しい観点からの橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)を継続し、成果を発表していく予定です。
*Yamashita A., et al. Journal of Affective Disorders 218: 306-312, 2017
入院病床は存在しないため、身体各科における入院患者の併診依頼対応(コンサルテーション・リエゾン精神医療)を中心に診療を行っています。毎年600名前後の診療依頼があり、せん妄、自殺未遂などの患者が多数を占めていました。当院における身体治療終了後に精神科的入院治療が必要な方には転院先をご紹介し、搬送しています。