(2018/09/10 up)
我が国の高齢化は著しく、2025年に認知症高齢者は462万人になるといわれており、身体的治療を主目的として治療に当たっている当院でも認知症高齢患者の入院は増加しています。
認知症高齢者は自分の思いや体調の変化をうまく伝えられないことも多く、また入院による環境の急激な変化は大きなストレスとなり、一時的な混乱を引き起こしやすい状況になります。そのため、生きてきた生活習慣や価値観を理解し、混乱が最小限になるような環境調整を行い、その人の視点にたって日々看護にあたる必要があります。
私は2017年に認知症看護認定看護師の資格を取得し、現在認知症看護専従として当院に勤務しています。そのなかで、認知症看護に向かう姿勢として大切にしていることが3つあります。それは、①その人の視点にたち理解しようとすること、②当たり前の生活を理解すること、③自分自身もいずれは高齢者になるという自覚をもつことです。
身体治療が優先される急性期医療の場でも、その人が何を大切にし、どんな人生を送ってきたのかを聞き、入院生活に取り入れていくことが大切だと思っています。実際に入院している患者さまに関わりを持つことで、入院による不安や孤独から焦燥や帰宅願望を強く持つ患者さまも、話しながら趣味の編み物を入院生活に取り入れたところ、療養環境が自宅の生活に近づき、安心して過ごせる環境となり落ち着かれました。また、自身の思いを言葉で伝えることが難しく、それが大きな声で叫ぶことに繋がっていた患者さまも、思い出の写真を一緒に見るような時間を作ることで自分の存在を受け入れられたと認識し、大声を出すこともなく写真を見ながら「懐かしい」と涙を流されたこともありました。このように、その人が歩んできた人生、習慣を取り入れ、少しでも安心できる環境になるよう私一人でなく、認知症ケアチームとして病院全体の取り組みとして活動しています。
そして最後に、私は日頃から高齢者になったときにどんな援助者と出会いたいかということを念頭に置いています。認知症高齢者は人生で培われた独自の価値観や生活習慣などを持つ自分の意思を持った人たちです。自分が自分らしくいられるような、自分を認めてもらえるような援助者と出会いたいと思うからこそ、その人たち自身の声に耳を傾け、看護を行っていきたいと思っています。