(2017/09/05 up)
災害医療センターでは毎年9月と1月に災害訓練を行っている。9月1日は関東大震災の発災日にあたる「防災の日」であり、同日前後に午後の外来診療をすべて休診として訓練を実施する。
今回の訓練の設定は首都直下型地震で震度6強、多摩地区は震度5強であり、病院の機能はすべて保たれている「レベル3A」と設定された。なお訓練の立案やコーディネートは東京都災害医療コーディネーターである救命救急科の金村医師を中心に看護部、事務部が担当した。
午後零時に地震が発生したと想定、震度6強以上の地震が日本のいずれの場所で発生しても、即座に災害対策本部が立ち上げられる。発災直後、病棟、外来、事務、エネルギー関係の各部門がそれぞれの被害状況を本部に報告し、それらの報告を総合的に判断して病院機能を判定する。院長の「災害レベル宣言の全館放送」を合図として訓練が開始された。
被災した傷病者役は多くのボランティアに参加していただき、傷病者役にはそれぞれ異なった外傷・症状を割り振られたラベル(トリアージタグ)が貼られる。トリアージを受け、赤、黄、緑、黒の4種類に大別される。赤=最優先治療群、黄=待機的治療群、緑=保留群、そして黒=無呼吸群である。それぞれの患者役は専門のメークアップを施し、リアルに準備された。まず病院での受け入れについて、赤は救命救急センターの出入り口から搬送した。黄は正面玄関から受け入れ整理された広い一階フロアーで対応した。緑は病院への入場を制限し、倉庫での治療を受け、他院への継続治療を指導誘導された。トリアージ作業には当初非常に人手を有し、さらに多くの人員での対応が必要であると認識された。
当然ではあるが、発災までは通常の病院機能を担っており、入院患者や外来患者であふれた病院である。しかし災害発生時には、新たな傷病者を受け入れる災害対策施設に瞬時に変更する必要がある。そのためには救命救急病棟患者のうち病状の比較的安定した者の判断と臨時ICUへの移送、新たな病床の確保が必要である。当センターには400ベッドが常時備蓄されている。病棟では迅速に入院中の患者さんを移動して、新たな病室空間を作りそこに新たなベッドを入れ、災害傷病者の受け入れを行う。
災害対策本部には逐一各部署からの実態と経過が伝えられ、ホワイトボードに時系列で報告が書かれていく。人員の配置は刻々と変化する実態に合わせて即座にフレキシブルに変更する必要がある。
今回の訓練では短時間に30名あまりの赤患者が殺到して人工呼吸器の数が律速段階となり、それ以降の患者の受け入れ態勢に支障をきたすことが浮き彫りにされた。また黄エリアの立ち上げ準備に時間がかかり、患者の治療や移送に遅れを生じた。
初めての経験である私にとっては「災害医療センター」の意義を強く感じる大変刺激的な訓練であった。各担当部門を見て回ったが、参加者すべてが真剣で迅速な対応を行っており、実際の災害時にも間違いなく役立つ医療チームであることを確信した。
16時に終了し、その後各部署で反省会を小一時間行った。災害対策本部でも訓練としての設定の問題や実際の災害時での対応について話し合われ、また必要な物品やリースの対応、また次回の訓練に向けての課題などについて活発な話し合いが行われた。
傷病者役として多数参加をしてくださった東京医療保健大学の学生さん、そのほかのボランティアの方々ありがとうございました。また実習室スペースを臨時ICUとして開放してくださった東京医療保健大学の関係各位に深謝いたします。
宗田