平成20年6月14日(土) 8:43 M7.2 震度6強の地震が東北地方を襲いました。
当院では、院内災害対策本部の設置基準である、東京23区で震度5強、
その他の地域で震度6弱以上の地震が発生すると、本部要員である幹部、事務職員と共にDMAT隊員や、
指定された医療救護派遣メンバーや看護師長などが本部となる会議室に参集します。
今般の岩手・宮城内陸地震では院内宿舎にいる職員が地震情報を聞きつけ、8:50には本部を立ち上げました。
当院の本部機能は、被災状況の情報収集により災害医療のニーズに対して、DMATまたは
医療救護班(初期医療班)を派遣します。また、全国に300施設が保有する日本DMATの事務局
として、厚生労働省医政局と共に全国のDMATの派遣に対するサポートを行います。
被災地近隣病院などの情報では傷病者が多くないようでしたが、被害の全容が掴めない
ため、内閣府のコンピュータの推計した被害情報やニュースの映像による土砂崩れ現場の
状況から、急性期の医療ニーズが有ると判断し、10:30にDMAT1隊(医師1,看護師1,
調整員2)をドクターカーで派遣し、さらに11:08にDMAT1隊(医師1,看護師1,調整員2)
を警察車両の先導により病院ワゴン車で派遣しました。
初動期の経過は下記のとおりです。
8:43 | M7.2 震度6強 |
8:48 | DIS情報 死者数100人未満、重傷者数100人未満 建築物全壊数700棟、避難者数3000人 |
8:50 | 災害医療センター内に災害対策本部設置 |
8:51 | 広域災害救急医療情報システム一斉通報により日本DMAT待機要請(厚労省) |
9:00 | 情報収集開始 (被災地近隣病院の状況、道路状況など) |
9:55 | 厚労省との調整で宮城県大崎市大崎市民病院をDMAT現地本部に決め、DMAT参集拠点とする。 |
10:30 | DMAT 1隊 医師1,看護師1、調整員2 ドクターカーにて出発 |
10:39 | EMIS DMAT運用ページによりDMATの参集拠点を大崎市民病院としたことを掲示 |
10:40 | 国立病院機構本部、厚労省へDMAT派遣を連絡 |
10:40 | DMAT 2隊目の派遣にあたり、立川警察署へ病院車両の先導を依頼 |
11:08 | DMAT 2隊 医師1,看護師1、調整員2 警察車両の先導のより病院ワゴン車にて出発 目的地 大崎市民病院 |
11:09 | 東京都福祉保健局救急災害医療課より東京DMATの待機要請 |
12:30 | 宮城県大崎市の被害が少ないため、栗原市にDMAT本部異動の調整を行う。 |
12:45 | 当院DMAT 2隊が東北道SA先で合流 |
13:00 | 厚労省、栗原市、栗原中央病院、栗原市消防本部等との調整により現地DMAT本部の異動を決定 |
13:14 | EMIS DMAT運用ページによりDMATの参集拠点を栗原中央病院に変更したことを掲示 |
15:55 | 当院DMATが栗原中央病院に到着 |
現地では、山形県立中央病院のDMATが先着し、統括DMATとして活動を行ってたため、当院DMATは
現地DMAT本部のサポートに入り、現地の情報収集や本部ミーティングに参加しています。 医療チームは周辺の医療機関へ派遣を行いましたが、栗原中央病院、栗駒病院及び花山地区診療所 などの医療機関は落ち着き、現地での医療ニーズは幸いに少ない状況でした。 救助救出活動は、この時点で湯浜温泉工事現場の土砂崩れ、駒ノ湯温泉建物倒壊など行われて いましたが、道路が寸断されており近づけず、ドクターヘリが待機を行っています。 また、胆沢地区でのバス転落事故現場から胆沢病院へ搬送された患者の後方搬送に福島医大の ドクターヘリが活動しています。 18:00に栗原中央病院に参集した16チームでのミーティングを開催し、活動の報告と今後の業務 分担を決め、4チームを除き本日は一時解散とし、明日午前8:30栗原中央病院に再度集合し、 ミーティングを開催の上、今後の活動方針を決めることとなり、当院DMATは、栗原中央病院で夜間 待機を担当し、24:00をもって他のDMATへ栗原中央病院の待機を引継ぎ、ホテル待機として一旦仙台 へ引き上げとなりました。 翌6月15日(日)8:30に栗原中央病院に待機していたチームを含め16チームが参集し、ミーティング を開催。 栗原中央病院長よりお礼の挨拶を受け、昨夜の状況を報告。11名の患者が来院したが、軽症で 入院となる患者はいませんでした。早朝に栗原市災害対策会議に統括DMAT医師が参加しましたが、 現時点での医療要請は無いとのこと。栗原市立中央病院も、平常業務をしており支援のニーズは無く、 花山地区の診療所等で巡回診療などの活動を行っている医療チームの状況を確認し、応援の要請が 無ければ10:00をもって宮城県の医療体制に引継ぎ、宮城県所属のDMATと統括を行っている山形県立 中央病院、サポートの当院を除き撤収を決定しました。 駒ノ湯温泉の土砂に埋もれている現場からの医療ニーズは無く、また、花山地区巡回診療も宮城県 チームで対応可能と判断されましたが、その後、花山地区より更に北側の中村地区・浅布地区が孤立 状態であり、多く年寄りを含む住民がヘリにて花山地区へ搬送される情報を得て、搬送者のメディ カルチェックが必要と考え、花山地区へ向かうことになりました。幸いに重傷者はいませんでしたが、 当院と宮城県のチームで避難者の誘導を手伝うことになりました。 避難者の誘導終了後、栗原中央病院へ戻り、その後の対応を宮城県チームに任せて、 DMAT本部機能を撤収しました。撤収にあたっては、厚労省、宮城県庁、栗原市、栗原中央病院の 了解を得ての撤収を行っています。 |
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16:30 | 当院DMAT 2隊 栗原市立栗原中央病院出発 |
23:30 | 災害医療センター到着、解散 |
今回の地震は東北地方の内陸部を震源地とする地震で人口が少ない地域での災害でした。都市部で同規模の地震があったとすると、甚大な被害と死傷者の発生が想像できます。
当院としては、派遣体制を含めた一層の体制整備が必要と感じられ、今後努力してまいる所存です。
また、今回の派遣レポートでは触れませんでしたが、岩手県側では、胆沢地区での地震によるバスの転落事故に対し、岩手、青森県のDMATチームが迅速に活動を行い、重傷者の治療及び後方搬送に尽力された他、千葉県、福島県のドクターヘリが有効な活動を行ったことをお伝えします。
地震でお亡くなりになった方のご冥福をお祈りするとともに、未だ行方不明者の捜索活動が続いています。早急な発見と、地域の復興を祈願いたします。