平成20年5月2日から3日未明にかけて、ミャンマーをサイクロン「ナルギス」が通過し、
死者・行方不明合わせて13万人以上をはじめとした未曾有の被害をもたらしました。この被害に対し、
当院から堀内医師(皮膚科)、妹尾看護師(感染管理)の2名が、平成20年5月29日から2週間、
国際緊急援助隊医療チームの隊員として派遣され、被災者に対する医療活動(9日間、診療患者数:延べ1202名)を
行いました。
診療活動の場所は、サイクロンによる被害が最も甚大であった南西部のデルタ地帯にあるラプタという街から
5キロほど離れた国道沿いにミャンマー軍が設置したキャンプで、そこでは一つの大型テントに10名ずつ、
6000名以上が暮らしていました。キャンプの生活環境は、飲料できる水、最低限の食糧は確保され、
共同トイレの区画も整備されている状態でしたが、毒蛇、サソリ、ムカデの生息地で、多数の蚊に対しては無防備でした。
発災からおよそ1ヶ月を経てからの派遣であったため、急性期の医療ニーズは少なく、診療した主な患者は、
急性の呼吸器感染症(ARI)、マラリアを含む発熱や下痢や発熱などの感染症、外傷の後遺症、
精神的なストレス障害に苦しんでいる被災者で、他にも多数の従来からの医療の手が届かなかった人、
サイクロンによって治療が中断されてしまっている人、キャンプの生活環境の中で結核を含めた種々の
持病が悪化している人などに対しての診療を行いました。災害弱者である小児に栄養不良・下痢・脱水・
肺炎が、老人に漠然とした体調不良・夜間の咳が多く見られる傾向がはっきりしていました。
活動の後半にはラプタの街や遠方の村から日本の医療チームの噂を聞いて受診に来る人が半数を越えるようになってきました。
中にはボートで近くまで来て前日からの泊まり込みで、あるいは徒歩で3時間以上かけて訪れた人もいました。
日本からは程遠いミャンマーの田舎での予定の活動期間を終え、診療に使用した衣料テント、資器材を現地(保健省)に引き渡し、これからも長期に及ぶであろう医療活動の成り行きを気にかけながら、
バスでヤンゴンまで13時間のデコボコ道の帰路につきました。